研究概要 |
平成14,15年度にわたり,リラクタンスモータの磁気飽和による効率劣化とその改善法に関する研究を行い,以下の主たる研究成果が得られた。 (1)1kWの同期リラクタンスモータを供試機として,巻線抵抗,d軸インダクタンス,q軸インダクタンスを正確に測定し,それらを各軸電流の指数関数により近似的に表現できることを確認した。 (2)銅損のみを考慮した場合と銅鏡だけでなく鉄損も考慮した場合について,指数関数的に表現された磁気飽和特性を利用した効率最大化新アルゴリズムを検討し,最適励磁電流をトルク電流の関数として与えることができた。このとき,パラメータ測定で得られたデータをもとに計算機による数値解析を行い,理論の妥当性を確認した。 (3)同一定格の同期リラクタンスモータを2台用意して,一方を供試機,他方を負荷機として実験検証システムを完成させた。また,汎用コンピュータ,A/D・D/A変換ボード,リアルタイムOS(RT-Linux)などを利用して,1台のコンピュータで供試機と負荷機を同時にベクトル制御するように全ディジタルソフトウェア制御システムを構築した。 (4)鉄損を無視した場合について,従来の励磁電流一定制御法,励磁電流をトルク電流と等しく制御する方法,本研究課題で提案する最適励磁電流を与える方法の3通りについてモータ効率の比較実験を実施した.その結果,励磁電流一定制御法と比べて平均6.4ポイント,励磁電流をトルク電流と等しく制御する方法と比べて平均5.4ポイントモータ効率が向上し,提案する手法が最も高いモータ効率を実現できることが確認された。 (5)確認のため,一定回転数,一定負荷において種々の励磁電流を与え,モータ効率が最大となる励磁条件を実験的に探索した。探索結果の励磁電流は本研究課題で理論的に求めた励磁電流特性を若干下回わるものの,両者はトルク電流に対して相似な非線形特性となることが確認された。これにより,提案する最適励磁電流条件が真に最大効率を実現するものであることを実証できた。
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