研究概要 |
本研究は,直流送電を含む電力系統の系統安定化制御手法検証のための模擬実験装置の開発,および模擬実験装置を用いた系統安定化手法の実験的検討を目的としている.本目的の達成に関して,本年度は以下に示す研究実績を上げた. 1.模擬実験装置の主要な構成要素である発電機モデルの製作および動作検証:昨年度に引き続いて同期発電機に関するモデリングをMATLAB/Simulink上のブロック線図表現を用いて遂行した.特に,本年度は力学系理論を併用した発電機モデルの検討により過渡動揺時の動特性を数値的・解析的に解明すると同時に,模擬装置で得られる実験結果の妥当性検証に力学系理論の適用可能性を示した. 2.模擬実験装置における送電線に相当するリアクタンスの検証:本年度は昨年度に設計・製作したリアクタンスの物理定数・Q値等の検証を行った.その結果,模擬実験装置を構成する発電機モデルおよびリアクタンスの製作および検証作業を完了した. 3.上記個別に製作した発電機モデルおよびリアクタンスを組み合わせたハイブリッド形模擬実験装置の開発および動作検証:本研究ではAD/DAボード,電流センサおよび電力増幅器を用いて個別に作成した発電機モデル(ディジタル要素:DSP上のプログラム)とリアクタンス(アナログ要素)を結合しハイブリッド形実験装置を構築した.続いて,無負荷試験等により実験装置の妥当性の検証を行った.以上により,直流送電による系統制御手法検証に向けた模擬実験装置の開発および検証作業の一部を終了した.これにより初期の目的を一応達成した. 4.交直連系系統の過渡安定性に関する解析的検討:本研究で開発した模擬装置により得られる実験結果を,解析的に検証することは不可欠である.本検討では交直連系系統の過渡安定境界の解析的条件を導出すると共に,直流送電における電力変換制御が過渡安定性に与える影響を理論的に初めて明らかにした.
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