研究概要 |
近年,省エネルギー・環境問題への対応のため,鉄損を正確に評価した解析や振動・騒音を考慮した構造・電磁気連成解析などの高度な電磁界解析が必要とされ、その結果,解析に多大な計算量が要求されることから,解析の高速化が重要な課題となっている。他方,高性能計算の分野ではPCクラスタの利用技術が進展しているが,電磁界解析分野では,対象物の構造の複雑性やゲージ問題などの種々の問題があることから,PCクラスタなどの並列計算環境の活用は立ち後れているのが現状である。そこで本研究では,並列計算環境における,(1)高速な電磁界解析アルゴリズムの開発,(2)鉄損を正確に評価した高度な最適設計計算法,の開発を目的として研究を行い、以下の成果を得た。 (1-a)連立一次方程式の高速解法として期待されるマルチグリッド法の中で,汎用性と簡便性に優れた代数マルチグリッド(AMG)法に着目し,AMG法の適用範囲を実対称H行列を係数行列とする連立一次方程式にまで拡大するとともに,電磁界解析の主流の解法である辺要素有限要素法に対するAMG法の適用手法の開発に成功した。(1-b)連立一次方程式の代表的な解法であるICCG法の並列化手法として,ブロック化赤-黒順序付け法を開発し,高い並列化効率と汎用性を持つ解法を実現した。 (2-a)分散計算環境下での遺伝アルゴリズム(GA)の研究を行い,有限要素法を用いた電気機器の最適形状設計問題について,島モデルGAが効果的であることを示した。(2-b)電磁界解析に適した磁気ヒステリシス特性の表現法の研究を行い、ストップモデルとプレイモデルを用いた,電磁鋼板の直流ヒステリシス特性の簡潔で正確なモデル化手法を開発するとともに,渦電流解析との併用により交流ヒステリシス特性を表現する手法を開発した。さらに,非整合格子を許容する有限要素法の回転機解析への応用を行った。
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