研究概要 |
平成12年度、13年度科学研究費補助金(課題番号12650285)の支援を受けて、試作した配電系電圧・電流波形計測用一体型センサは、筐体にポリアセタール樹脂を採用することで、電極やサーチコイル配置位置の自由度が高く、電気的にも高い絶縁性を保持し、リアルタイムで配電系の負荷状態を把握することができる、実用的なセンサであることが理論的にも実験的にも例証されている。一方、配電系統における高調波成分は、系統を介して広く受電者側に浸透し、元来高周波領域で使用することを前提とされず設計された磁気リアクトル等に損傷を与え、火災事故に至るケースも生じている。平成15年度では、本センサシステムでの高調波成分検出可能性について重点的に調査研究を進めた。 上記課題研究の後を受けて平成14年度から採択された本研究課題で研究担当者等は、先ず、計測系のシステムを構築することから始め、相間電流による電流センサ波形の位相ずれの影響、計測波形に高調波成分が重畳することが実験的に明らかにした。最終年度である平成15年度では、前年度判明した高調波成分の検出可能性を、理論的側面から究明するために、前年度完成した過渡電磁界解析プログラムと同時並行で導入したPentium IVベースの6CPU構成のクラスター・システムを用いて、有限要素法による過渡電磁界解析を実施した。実験結果と今年度の数値解析から、電流センサ出力波形には、鎖交磁束の微分に基づく高調波成分が含まれていることが明らかになった。そこで、抵抗とコンデンサからなる単純なローパスフィルタを設計し、電流センサ出力波形の高調波成分が除去可能であることを例証した。また、本年度の成果から、本センサの電流検出部では、ローパスフィルタを通すことによって,力率測定のための電流位相観測ができ,更に,センサ出力を直接FFT処理すれば,高調波成分を取り出すことができ,力率測定と前述の配電系に浸透する高調波成分観測の双方を兼ねるセンサであることが示され,実用化に更に、一歩進んだ。
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