研究概要 |
本研究では,風力・マイクロ水力発電に利用する誘導発電機の高性能化を目的に,ロータ内部に回転マグネットを内蔵した新構造の誘導発電機(「PM誘導発電機」と仮称)について検討した。得られた成果は,次の通りである。 1.設計理論の開発 構造及び運転法の最適化を検討するには,特性を定量的に予測できる理論が必要である。そこで,回路モデルによる特性算定法と磁界解析法を構築した。 <1.1>回路モデルによる特性算定法の構築 PM誘導発電機内部の非線形磁気現象を忠実に反映するため,双対原理を用いて特性解析用の回路モデルを導出し,その妥当性を検証した。導出したモデルは,実測値と数%以内の誤差で,精度よく特性が予測できる。 <1.2>磁界解析法の構築 開発した回路モデルと2次元静磁界解析を組み合わせた新規な磁界解析法を構築した。これにより,機器内部の非線形電磁現象の可視化と定量的な把握を可能にした。 2.性能試験 2.2kWの試作機を製作し,これにより以下の性能試験を実施した。 <2.1>連系時の突入電流測定試験 連系時の電圧の投入位相,ロータの回転速度をパラメータに突入電流の特性を解析した。その結果,突入電流の大きさは,回転速度に依存せず,電圧の投入位相だけに関係することが判明した。今後,得られた結果を基に,突入電流の抑制法を検討する必要がある。 <2.2>負荷試験 力率,効率特性を中心に,三相ならびに単相運転した場合の出力特性を実測した。また,PM誘導発電機の性能をより明確に把握するため,同一体格の汎用誘導発電機と比較した。その結果,汎用誘導発電機に比べて,力率,効率ともに5〜8%程度向上することが分かった。特に,出力が約1.3〜1.5倍増加し,回転マグネットの効力が実証できた。
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