研究概要 |
本研究は、代表的強誘電体をベースとしたMnドープペロブスカイト型酸化物A_<1-x>La_xM_<1-x>Mn_xO_3 (A=Sr, Ba, Ca, Pb, M=Ti, Zr)において、Bサイトを占めるMnイオンが希薄であるにもかかわらず高い強磁性キュリー温度を示す強磁性の発現機構を明らかにすると共に、強誘電性、圧電性と強磁性の相関を探査して電圧による磁性制御の可能性を示すことを目的として行われ、以下の成果を得た。 1.ATiO_3(A=Sr, Ba, Ca)へのLa-Mn共ドープは、Mn量に比例した磁化を持つ室温強磁性を示すが、キュリー温度はそれぞれ強磁性酸化物(La, A)MnO_3のそれらに近い値を示し、Mn量にはほとんど依存しなかった。また、これらの磁化は、焼成温度に強く依存し、セラミックスの焼き締まる1200℃以上で急速に減少することを見出した。 2.結晶粒界付近での高分解能透過電子顕微鏡観察およびEDXによる組成分析により、Ba系材料では粒界部にMnリッチな結晶粒が観測されるものもあった。またこれらの系では、La, Mnドープ量の増加とともにX線回折に(La, Ba)MnO_3に近い微量のピークが観測された。これらの結果より、観測された室温強磁性は、強誘電体母在中への微量な強磁性Mn酸化物相の析出による可能性が極めて高いことが明らかになった。3.1mol%La, MnドープBaTiO_3において、世界で初めて室温で大きな磁化と強誘電性を示す強磁性・強誘電性共存材料の作製に成功した。 4.室温強磁性・強誘電性共存材料La, Mn1mol%ドープBaTiO_3において、1KV/mmの電界印加により、強磁性飽和磁化が最大70%と極めて大きな減少をしめすことを明らかにした。この電界による磁化の減少は、世界で初めて達成されたものであり、夢であった電界による磁性制御に大きく道を開く結果である。
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