研究概要 |
本研究は気相吸着法による測定が困難なおよそ0.7nm以下の細孔を有する活性炭を始めとする炭素のナノ構造について,高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM),シミュレーションおよび画像処理を用いて解析を行った. HRTEMの高分解能領域でTEM像は,対物レンズのコントラスト伝達関数に従う電子線の透過波と回折波の干渉による位相コントラストにより得られるため,まず,使用したHRTEMの位相コントラスト伝達関数(伝達関すと略記)を計算し,アモルファスカーボンフィルムの実際のHRTEM像と比較し,色収差等の減衰を考慮した伝達関数の確認を行った.これには2次元処理高速フーリエ変換(2D-FFT)による画像処理手法を併用した.活性炭などアモルファス構造材料のHRTEM観察では,この伝達関数を利用して,アンダーフォーカスΔfを調製し,観察サイズ領域を確認して行うことができ,本手法が有効であることがわかった.Ployparaphenylene焼成炭,ピッチ系炭素,カーボンナノファイバーについて同手法を適用し,ナノ構造の解析を行った. 0.7nm以下の細孔を有する分子篩機能のある微細な孔を有する試料を含む細孔径の異なる4種類の試料について気相吸着特性をN_2により77Kで測定した.さらに他機関の協力を得て,同試料の加圧下(最大4MPa)でのCO_2吸着により求めた細孔分布とHRTEMによる解析結果を比較した.N_2による吸脱着等温線から分子篩機能のある微細な孔を有する試料はN_2がほとんど吸着されず,N_2を通すことのできる細孔が外部に通じていないことがわかった.HRTEMによる解析結果とCO_2の吸着による測定結果にある程度関連性が見られた.CO_2の吸着による測定法およびHRTEMによる細孔測定法のそれぞれの異なる手法を相補的に用いることにより,活性炭の超微細孔の構造について解析手法を進展させることができた.
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