研究概要 |
絶縁物マトリクス中にCo,Feなどの磁性金属微粒子が分散した構造を持つ金属-酸化物系グラニュラ薄膜は,磁性金属の含有量が50〜70vol.%において,軟磁性かつ高電気抵抗の特性を示し,次世代のマイクロ磁気デバイスへの応用が期待されている.従来,金属-酸化物グラニュラ薄膜はスパッタ法により作製されてきた.しかし,我々は,金属-酸化物同時電析法と呼ぶ電気化学反応によるグラニュラ薄膜の作製に取り組んでいる.しかし,これまでに得られたCo-Ce-O膜の保磁力は最も小さいもので約1600eと優れた軟磁気特性は得られなかった. そこで,本研究では,優れた磁気特性を有する金属-酸化物系グラニュラ薄膜を得るために以下の取り組みを行った. 1)磁性金属をCoからFeに変更したFe-Ce-Oグラニュラ薄膜の作製 2)電析中の超音波照射や,パルス波形を用いた電析などによるナノ構造の制御 3)磁性金属の合金化の検討のためにCo-Pt電析膜の作製 その結果,以下のような成果が得られた. 1)金属-酸化物同時電析法により,Fe-Ce-O薄膜を作製することに成功した.この際に,溶液中でFe^<2+>がFe^<3+>に酸化することを防止するために,Lアスコルビン酸の添加が必要であることと,Feが酸化物や水酸化物として析出することを防ぐためには硫酸アンモニウムの添加が有効であることを見出した.得られた薄膜の保磁力は,約500eと軟磁気特性の改善が行えた. 2)超音波照射やパルス波形電析を金属-酸化物同時電析法に初めて適用した.そのために,必要なパルス電析システムの構築を行った. 3)優れた硬磁気特性を示すCo-Pt合金薄膜を電析法により作製することに成功した.この合金は,グラニュラ薄膜への応用以外に,薄膜磁石への応用も期待できる.
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