研究概要 |
本研究は,層状酸化物高温超伝導体Bi_2Sr_2CaCu_2O_y(BSCCO)単結晶(転移温度:〜85K)に内在する固有ジョセフソン結合超格子をサブミクロン領域まで微小化し,そのナノエレクトロニクスへの応用を目指すものであり,微小固有ジョセフソン接合の本質的なジョセフソン並びに準粒子トンネル特性の解明,及び同超格子の単電子トンネル素子に代表されるナノエレクトロニクスへの応用について検討し,以下の成果を得た.(1)BSCCO単結晶を電子ビームリソグラフィ並びにArイオンエッチング技術を用いたサブミクロン素子作製技術を確立した.これにより制御性・再現性のよい素子作製が可能となった.(2)上記作製技術により異なるサイズのメサ素子に加工し,固有ジョセフソン接合特性のサイズ依存性を調べた.その結果,メサ内の接合数が少ない場合,単一固有ジョセフソン接合のギャップ電圧は,接合面積に依存せず約60mVであることを明らかにした.さらに素子サイズをサブミクロン領域まで微小化するとクーロンブロッケード効果の寄与により臨界電流密度が著しく抑圧されることを見出した.(3)多数の接合が積層した固有ジョセフソン接合アレーにおける臨界電流は,接合面積の増加とともに広く分布することがわかった.また,実験で得られた臨界電流分布を熱活性モデルにより解析した結果,同接合で観測された臨界電流分布は,熱ノイズよりもボルテックス揺らぎの影響が大きいことを見出した.さらに,臨界電流の温度依存性は,接合の微小化に伴い系統的に変化することを明らかにした.この温度依存性の変化は熱ノイズを考慮したRSJモデルによりよく説明できることがわかった.(4)微小固有ジョセフソン接合アレーのナノエレクトロニクス応用例として,単電子対トンネル素子,定電圧発生素子,SQUID素子を作製し,その特性評価を行った.
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