研究概要 |
有機EL素子は表示素子としての応用・実用化を目指して開発・研究が精力的に行われている.表示に応用される光は有機層に対して垂直方向に放射される.しかし,有機層内での発光は等方的であるため,有機層,ITO電極層,ガラス基盤中を伝搬して素子の端面からも光放射が起こる.この端面から放射される光を垂直方向に放射される光と比較しながら,その光学特性(スペクトル,放射分布,偏光)について調べた. (1)放射スペクトル 素子端面から放射される光のスペクトルは,垂直方向放射光に較べて最大光強度となる波長が短波長側にシフトし,かつ,スペクトル幅は狭くなる場合のあることがわかった.この特徴は,発光面サイズが6mmの時に顕著に観測された. (2)放射分布 端面放射光の空間分布は,端面方向から40度の方向に強く光が放射されていることがわかった.発光面サイズを1から9mmの間で変化させて端面放射光の角度分布を測定した結果,発光面サイズが小さくなるにしたがい強く光放射が起こる方向が大きな角度領域に移ることが判った.特に,発光面サイズが6mm以下の領域で顕著であった.発光波長を長くすると,光を強く放射する角度が小さくなる傾向がある.いずれの特性にも,ガラス基盤中で反射を繰り返して伝搬し,放射する成分の影響が大きいと推測している. (3)偏光特性 垂直方向に放射される光は非偏光な特性であるが,端面放射光は有機膜面に対して垂直方向に偏光した成分の強いことが明らかになった.この特性は,発光波長を変えてもほとんど同じであった.
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