研究概要 |
本研究では,情報源アルファベットの要素が,単にテキストの文字,量子化された音声の振幅,画像の輝度、彩度という離散有限値データに限定されず,計算機科学においてしばしば出現する、整数、木,グラフ,ヤング・タブローなどの可算無限個からなる離散情報構造を備えたもののユニバーサル符号化を探求した.可算無限個からなる離散情報構造として2分木の符号化の理論的解析を完成させ,k分木、ベクトルk分木へと研究の対象を拡大して,ユニバーサルデータ圧縮に有用な離散情報構造の探求を続けた.さらに,木構造クラスを部分集合として含む,Young Tableauxへと研究を深めていった.2分木は2xnの矩形Young Tableauxに対応させることが出来るが,k分木、ベクトルk分木などは一般に通常の意味のYoung Tableauxに対応させることはできない.しかし,拡張Young Tableauxという概念を導入するとk分木,ベクトルk分木を表現することが可能となり,一般木の新しい符号化の導入に示唆を与えることができた.さらに,Young Tableauxを多次元(とくに3次元)へ拡張することにより,多様な可算無限個からなる離散情報構造の利用の可能性と,多次元Tableaux数え上げHook公式の不成立,Bumping算法の拡張の意味などに関する知見を得ることができた.これらの結果は、いくつもの国際的な会議において発表され、計算機科学にみられる離散情報構造そのものの符号化を情報理論的観点から探究し,ユニバーサル・データ圧縮に直接適用可能な新しい整数符号化の設計指針をあたえるという意味で注目を浴びている. これらの理論的研究とともに,近年注目されている誤り訂正符号である低密度パリティ検査符号の構成及びその復号について;またセキュリティ保護一手法であるステガノグラフィーおよび,電子透かしについて実験的な検討を行った.
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