研究概要 |
平成13年12月,南極大陸の昭和・中山両基地で流星バースト通信(MBC)無線局の設置工事を開始し,平成14年4月には正式な実験データの取得を開始した.実験は,中山基地から送信される無変調トーン信号を昭和基地で受信することにより,この地域での低VHF帯通信路の定量的・定性的な性質を調べるためのトーン実験と,この地域でのMBCシステムのデータ伝送能力を調べるための米国MCC社製機器によるデータ実験(昭和マスター,中山リモート)よりなる.トーン実験は平成16年11月まで2.5年間続けられ,またこのデータ実験は平成14年末まで9か月間続けられた.その後平成15年4月からの9か月間は,ドームふじ観測拠点にもリモート局を設置し,中山基地と合わせた2リモート局からのデータ収集実験を行った.さらに,平成16年4月から11月末までの8か月間は,当研究室で開発したソフトウェアモデムによるMBCシステムRANDOMによる,中山基地から昭和基地へのデータ伝送実験を行った.上記すべての実験は順調に進行し,結果は順次国内に送られた.データの分析・考察は現在進行中であるが,これまでに以下に示すような結果が得られている。1)このような高緯度地域でも,数%の通信路デューティ比(通信路の開いている時間割合)で,流星バーストによる通信路が開く.2)現地時間0時の前後数時間の間に,通信路デューティ比が100%近くになる,流星バーストによる伝搬とは別種の伝搬現象が頻発する.これは,オーロラ活動と何らかの関係があるものと思われる.3)上記の非流星伝搬は,一部の時間帯を除いてドップラシフトやフェージングも少なく,データ伝送に有効に利用できる.4)ドームふじ-昭和回線は,中山-昭和回線より通信路デューティが低く,データ伝送量も少ない.5)RANDOMシステムによるデータ伝送量は,MCCシステムによるものより数倍大きい.また比較のため,同じ設定・同じRANDOM機器による国内データ伝送実験を,平成16年10月から,浜松-宮崎間で行っている.
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