研究概要 |
運動機能に障害のある人のパソコン入力操作において,手ぶれを補正する機能を移動平均法を用いて除去することを行った.脳性麻痺の患者の作業療法として利用できるように,絵を描くためのペイントツール形式として実現した.入力デバイスはペンタブレット,マウス,トラックボールなど利用者の好みに応じて選択可能とした. 手ぶれの補正機能の評価としては,医療福祉法人東部島根心身障害医療福祉センターにおいて,実際に脳性麻痺の患者に決められた図形をなぞる操作を行ってもらい,軌跡のぶれを定量的に評価した.ぶれの量は平均すると補正後の方が小さくなるが,患者ごとの特性の違いからデータのばらつきが多く,t検定による評価では積極的な向上が認められなかった.これについては,ソフトウェア的に自由度を持たせる設定を実現してはいたが,個々の患者の能力に適した設定を自動的に検出する機能が必要であり,今後の課題として残された. マウスの保持が困難な障害者のために,製図板を改良したマウス操作支援器具を試作した.製図板のダンピング機能によりぶれが抑えられる効果は見られたが,パソコン操作の自由度が無くなり,障害者にとって使いやすいものとはならないことが予想され,より小型で安価な操作支援器具としてテレビゲーム機の活用を検討した.インターフェイスは現在も開発中であるが,価格や堅牢性の面で高いポテンシャルを有することがわかってきた. また,図形描画だけでなく操作全般にわたる手ぶれ補正への拡張として,ソフトウェアキーボードに,カーソル吸着機能やキー拡大機能を取り込み,操作支援環境を構築した.これらの機能については,兵庫県立総合リハビリテーションセンターにおいて,今後実証実験をかねた利用が予定されており,その結果を検討し改良する予定である.今回のソフトウェアキーボードに関しては,携帯電話の入力方式の活用がキーとなっており,シミュレーションでは入力効率の向上が予想されたので,今後は機能の充実を行い,ペイントツールと併せて公開する予定である.
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