研究概要 |
本研究では,動き補償予測と波形符号化アルゴリズムをシームレスに統合した新しいタイプの動画像符号化方式を提案し,その有効性を示した.以下に本研究の主たる成果を概説する. 1.Matching pursuitsに基づいた波形符号化アルゴリズムの検討 上記の目的に合致した波形符号化アルゴリズムを実現するため,非直交な基底関数群を用いて波形を反復近似するmatching pursuitsの原理に着目し,レート・歪特性の改良を行った. 2.反復型動き補償方式の開発 前フレームの再生画像を初期値とし,位置とサイズが可変の矩形ブロック単位で局所的な動き補償予測を繰り返し実行するアルゴリズムを考案し,その効率的な実装法について検討を加えた. 3.Matching pursuitsと反復型動き補償の統合 上記2つのアルゴリズムを同一の反復処理の中で適応選択する手法を開発した.その際,レート・歪勾配に基づいたコスト関数を導入することで,動き補償と波形符号化それぞれに要する符号量を画像の性質や所望の画質に応じて適切に分配することが可能となった. 4.符号化効率の改善に関する検討 非可分型基底関数の採用,オーバラップ動き補償や非整数精度の動き検出による動き補償の効率化,算術符号に基づいた適応的エントロピー符号器の導入など,様々な工夫により符号化効率の改善を図った. 5.ソフトウェアコーデックの実装と性能評価 最終的な符号化アルゴリズムをソフトウェアで実装し,各種のテスト画像を対象として性能評価のための実験を行った.これにより,提案方式が最新の国際標準方式であるH.264/AVCを上回る優れたレート・歪特性を有していることが実証された.
|