研究概要 |
量子計算機・量子暗号・量子通信などを含めた量子情報通信技術に関しては未だ克服しなければならない課題が数多く残されており,その実現にはまだまだ時間を要するであろう.しかしながら,その実現に向けて現在様々な分野で理論的な側面からだけではなく実験的な側面からも精力的に研究が推進されている.本研究で取り扱っている『量子誤り訂正符号に関する研究』もその一つであり,ここ数年の間に急激に研究成果が報告されている研究分野である.量子誤り訂正符号化技術は高信頼な量子情報通信システムを構築する上で量子情報の信頼性を確保・保証するためには必要不可欠な技術として期待されている. 本研究における最終目標は量子誤り訂正符号の理論的な体系を与える"量子符号理論"を確立することにある.この目標に向けて,新しい量子誤り訂正符号を発見するために理論的な立場から研究を行った. 具体的には,CSS符号タイプの量子誤り訂正符号を中心に詳細な検討を行った.そして,研究代表者自身が提案したアルゴリズムを用いて量子バースト誤り訂正符号を計算機で実際に探索した.その結果,いくつかの効率の良い量子バースト誤り訂正符号を新たに特定することができた.さらに,新しい試みとして,古典符号の中で極めて重要な符号として知られているリードソロモン符号に着目し,リードソロモン符号族を基にして新しい量子誤り訂正符号が構成できるか否かという問題に取り組み始めた.特に,リードソロモン符号の部分空間部分符号(SSRS符号)および一般化リードソロモン符号(GRS符号)に対して基礎的な考察を行った.残念ながら,現時点では最終的な結論が得られていないが,SSRS符号あるいはGRS符号を利用することによって新しい量子誤り訂正符号を得る可能性はあると予想される.この点に関しては今後継続して検討を行う予定である.
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