研究概要 |
視線を用いたパソコンへの情報入力のために,頭を10cm程度動かすことができる非接触・遠隔ビデオ式の高精度の注視点検出装置の開発を目的に研究を行った.本装置における検出理論では,顔全体を写すことができる広角ステレオカメラによって瞳孔の正確な3次元位置を求め,パンチルト台に固定した3台目の狭角カメラを目に向けて,拡大した眼を撮影し,瞳孔の中心と光源の角膜反射の中心を検出し,それらの位置関係から狭角カメラの光軸と視線のなす角度を求め,視線と視対象との交点として注視点を求めた. 平成15年度までに,ステレオカメラの各カメラの開口部周りに,リング状に配置した近赤外LEDを取り付け,それらをビデオフィールド信号に同期させて交互に点灯させ,各カメラで瞳孔の明るい画像と暗い画像を得て,画像差分することで瞳孔を検出しやすくし,瞳孔の3次元座標を求め,その座標に狭角カメラを向けられるようにした.また,狭角カメラには,ステレオカメラとは波長の異なるリング状光源を開口部に近い位置と少し離れた位置に設置し,ほぼ同様の方法で瞳孔を,また,角膜反射を明瞳孔画像から検出した. 平成16年度は,眼球の光学系が,視軸を軸とする軸対称の形状をしているという仮定を利用した注視点較正法を考案した.これはパソコンディスプレイ上の座標が既知の1点と狭角カメラを見るだけで簡単に較正が取れる方法である.実験をしたところ,ディスプレイ上の位置によっては検出される視点座標に原因不明のずれが見られたが,ディスプレイから顔までの距離が変わっても,視点出結果がほとんど変わらないことから,本注視点検出法の有効性が示せた.また,狭角カメラで得られた画像において瞳孔のエッジに角膜反射が位置するときに瞳孔中心が正確に検出しにくいのを改善したため,視点のばらつきは1.5cm以内に収まるようになった.
|