研究概要 |
医用X線CTの逐次再構成法は,フィルタ補正逆投影法よりも高品質な再構成画像が得られることに特長があるが,繰返しによる計算時間が長いことが原因で実用化には至っていない.本研究代表者は,離散力学系としての逐次再構成アルゴリズムを非線形力学系の固定点方程式の求解問題に帰着させることにより,計算時間の劇的な短縮が可能であることを示した.本研究期間において,提案手法の理論的証明とプログラム開発による実験結果の検証を行った. 研究実績の概要は次の通りであり.申請時において設定した目標を達成させることができた. 1.代数的再構成法から導かれた離散時間非線形力学系の性質を調べ,収束性を理論的に検討した.すなわち,固定点方程式の求解に反復法を適用するために必要となる固定点方程式のヤコビ行列の対称性を証明した.さらに,固定点方程式の解に関する特性乗数により固定点の安定性を評価し,最尤法が代数的再構成法よりも高速であることを理論的に示した. 2.固定点方程式を最急降下法及び共役勾配法で求める手法を検討した.代数的再構成法から導かれた反復方程式を共役勾配法で求解する方法が最も高速に真値の近似値を推定できることがわかった. 3.理論的考察と並行して,提案手法のプログラム開発を行い,数値演算用計算機にインプリメントしたプログラムを用いて,種々のファントムデータに適用を行った.本提案手法のメリットは金属アーチファクトの削減効果にあることから,ファントムデータに仮定する金属部の位置や面積を変化させて実験を行い,金属部に関する条件が適用結果にどのような問題を与えるか検討した. 4.実験結果より,従来の代数的再構成法の長所である金属アーチファクトに対する優秀な削減効果を活かしながら,収束速度が遅いという欠点の克服が可能であることが例証された.
|