研究概要 |
プリント基板を組み合わせた立体的な構成で伝送線路を形成し,電流プローブを開発することを目的としている。この場合,電流プローブ単体が示す電気的な諸特性も重要であるが,最も重要な点は電流を計測している状態において,プローブの電流検出部分となる線路と被測定線路で構成される伝送線路(本報告では「T」型伝送線路と呼ぶ)が示す電気的特性である。ベクトル的な電流検出が可能な電流プローブを構成するためには,この「T」型伝送線路の特性インピーダンスを50Ωに設定することが必要となる。「T」型伝送線路の構造は,電流プローブをプリント基板で構成することを目指しているので,被測定線路と電流検出部分の線路は両者とも平板線路で構成されるため,垂直部分の線路の幅により静電的には電気力線の分布が大きく異なる。すなわち,垂直部分の線路の幅により等価誘電率が大きく変化する。 本研究では,伝送線路理論を展開することで,構成した「T」型伝送線路の先端を測定システムの特性インピーダンスで終端し,もう一方の端子対より伝送線路系の周波数に対する電圧反射係数の絶対値で最大値を求めることで(ネットワークアナライザを使用),構成した「T」型伝送線路の特性インピーダンスが計算により求めることが可能であることを導出した。真空中で構成される「T」型伝送線路に対する特性インピーダンスは,厳密解を求めることが可能であり,同じ線路の配置でプリント基板で構成した「T」型伝送線路の特性インピーダンス(実験値)の比を求めることで等価誘電率が算出できる。 3ヶ年の研究期間を通して,各種構成のT型伝送線路を試作し,特性インピーダンスの変化の様子を実験的に求めた。ここでは,伝送線路の特性インピーダンスの測定を「T」型伝送線路に適用しているが,この考え方は伝送線路の形状に左右されず,TEM型伝送線路対する特性インピーダンスが実験的に求められることを示している。今後,様々なものに応用が可能である。
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