配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,900千円)
2004年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2003年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2002年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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研究概要 |
網膜の情報処理機構の解明を目指した研究によって,網膜内神経細胞の数理モデルが構築されてきた.従来モデルは,神経細胞の細胞膜や細胞内の生理学的な特性を微分方程式として記述したものである.一方,神経細胞の電気的活動の基本を担う機構は,細胞膜に存在し確率的に開閉するイオンチャネルである.すなわち,従来モデルはチャネル全体の集合平均としての挙動を微分方程式として記述したものであり,決定論的なものである.しかしながら,神経スパイクが発生するタイミングには,イオンチャネルの確率的な振る舞いが重要な役割を果たすことが近年示唆されており,確率論的挙動の役割を明らかにすることが重要と考えられる.そこで,本研究では,イオンチャネルの確率論的特性を導入した網膜神経細胞の数理モデルを構築し,「網膜でのスパイク発火においてイオンチャネルの確率的特性がどのような役割を果たすか」,「視覚情報がどのようなスパイク信号に符号化されるか」について,その具体的機構と機能的意義を明らかとすることを目的としている. 本研究では,網膜神経節細胞のイオンチャネル(Naチャネル,Caチャネル,3種類のKチャネル)に関する状態遷移モデルを構築した.チャネルの状態は一様乱数によって確率的に遷移するように記述した.電流刺激としてステップおよびガウス性入力をそれぞれ20回加え,得られた神経スパイクからラスタープロットを求めた.その結果,ステップ入力に対しては,発火タイミングが著しく変動するが,ガウス性入力に対しては,発火タイミングに再現性のあることがわかった.この結果は,ノイズ状の信号が重畳している場合,神経節細胞における情報の符号化がより安定するという機能的な意義を示唆するものである.今後はこうした予測を実証するため,視細胞や2次ニューロンを含めた網膜神経回路モデルを構築し,実際の視覚入力に対する情報符号化の特性を解析していく必要がある.
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