研究課題
基盤研究(C)
温暖化などのグローバルな気候変動の解明には宇宙からの降雨観測が必要で、特に衛星搭載降雨レーダによる観測は降雨の3次元構造を定量的に精度よく測定することから重要である。ところで、現在運用中の熱帯降雨観測(TRMM)衛星搭載降雨レーダでは、チベットやアンデスなどの山岳地域で、非常に小さな発生確率ではあるが地表面エコーを降雨エコーと誤判定することがあり、レーダ工学上の一つの問題となっている。本研究の最終目的は、衛星搭載降雨レーダの観測で地表面エコーと降雨エコーとを高精度で分離することであるが、このためには正確なデジタル高度情報が必要である。このため、TRMM衛星搭載降雨レーダのデータを用いた地表面高度情報(標高マップ)の作成を行った。初年度の平成14年度に各種のグリッド間隔での標高データ作成の検討を行い2km×2kmのマップ作成が望ましいとの結論に至り、初年度と次年度(平成15年度)において1998年2月及び1998年9月の2km×2kmグリッドの地表面デジタル高度情報(標高マップ)を作成した。1ヶ月弱のデータがあれば観測領域の全体がカバーされることがわかった。最終年度の平成16年度は、このようにして求めた標高マップと、既存のデジタル高度情報としては最も精度が良いとされているSRTM(Shuttle Radar Topography Mission)の30秒角の全球データであるSRTM30(水平方向分解能1km)とのより詳しい比較を行った。エベレストを含む領域で細かく調べると、SRTM30には山頂の値に近い8000mを超える標高が格納されており、標高の変動が激しい。これに対し、TRMM衛星搭載降雨レーダで求めた標高マップはSRTM30の裾野をなぞるなだらかな形となっていることが判明した。この結果は、山岳地域におけるSRTM30の標高値は1kmグリッドでの平均値ではなく最大値を格納してしることを示唆している。衛星搭載降雨レーダ観測における地表面エコーと降雨エコーとの分離には、地表面エコーのピーク位置の決定と、地表面エコーの上端位置の決定の2段階が必要となる。地表面エコーのピーク位置の決定にはTRMM衛星搭載降雨レーダで求めた標高マップの使用が有益である。他方、地表面エコーの上端位置の決定には1km分解能での標高の変動が必要で、この目的にはSRTM30の使用が適していると結論できる。ただし、SRTM30のデータを10km×10km程度の範囲で使用し、メディアンを使用するのが有効との見通しも得ることができた。本研究の成果を現行の衛星搭載降雨レーダの標準アルゴリズムに反映させることは、今後の課題である。
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Proceedings of ISAP'04, Sendai, Japan
ページ: 833-836
Proceeding of ISAP'04, Sendai, Japan,
Proceedings of ISAP'04,Sendai, Japan
日本リモートセンシング学会、第35回学術講演会論文集
ページ: 95-96
The 35th National Remote Sensing Symposium, Remote Sensing Society of Japan, Proceeding (in Japanese)