研究概要 |
ヒューマノイドロボットの歩行は足部の足底面と床面が接触して行われ,ロボットが環境から受ける情報の授受はこの足底面を構成する接触面を通して行われる.したがって,この足底面と床面との接触状態が観測できれば,床面からロボットに作用する力・モーメントをヒューマノイドロボットの歩行制御に利用可能となる. 本研究の実験を行うために,ヒューマノイドロボットとしてHOAP-1(富士通研究所製)を用い,この足底面に試作した触覚センサを用いて足底面に働く床反力分布の計測を行った.本研究に用いた触覚センサはロボットハンドに利用されてきた感圧導電性ゴムを利用した.感圧導電性ゴムは圧力によって変形し,電極間の抵抗値が変化するので,この原理を用いて構成した.ちなみに,足底面の大きさは98mmx63mmで,電極間隔3.2mm,正方形電極2mmx2mmで,感圧導電性ゴムの厚みは0.5mmを用いた.また,触覚センサはアレイ状(16x30)に構成し,零電位法を用いてデータ取得の際に生ずる回り込み電流を抑制した.この触覚センサデータをヒューマノイドロボットの歩行に合わせて,リアルタイム(最高1msのサンプリング)に取得を行うために,RT-Linuxシステムを構成した.触覚センサを構成する各センシング要素の加圧力対電圧,加圧力対変位について校正実験を行い,ヒューマノイドロボットの歩行を自然な歩行に設定し,ZMPをリアルタイムで観測できた.このZMPの変化はヒューマノイドロボットの制御方法に関係するので,今後,各種のヒューマノイドロボットを用いてZMPを取得し,制御方法について評価したい. 本研究成果により,ヒューマノイドロボットの歩行先の床面に置かれている障害物を足底面が接触し,触覚センサから観測された触覚像を用いて障害物の発見,また障害物の形状等の把握を可能にし,ヒューマノイドロボットが障害物を避けたり,階段のエッジを識別しながら昇って行く動作を実現したい. 最後に,ヒューマノイドロボットの足部に6軸の力成分の計測と足底面の床反力分布結果の融合により,ヒューマノイドロボットのより柔軟なかつ安定な歩行の実現が今後の課題となる.
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