研究概要 |
宇宙や医療の分野で利用されるロボットには,複雑で多種多様な作業を行うことが要求され,ロボットハンドによる未知形状物体の把持・操作が重要となる.本研究では物体の把持・操作に不可欠な触覚センサの改良,未知形状物体の把持戦略を提案した.従来の触覚センサは,升目状に交互に検出領域と非検出領域があるため,高剛性の物体把持時に接触点を検出できない場合があった.センサの電極幅・ピッチを変更し,計測点数を従来の235点増加,1計測点当たりの有効感圧面積を3.5倍に増加した触覚センサを試作し,より正確な触覚情報を検出可能とした.生後約10ヶ月までの乳児が行う握り反射は,指や掌に物体が触れると物体形状を知らずとも指を屈曲させ物体を把持する.さらに,把持物体を引き離そうとすると強く握りしめる.様々な未知物体を把持するため,この握り反射を模擬した把持戦略(初期把持位置の補正,把握,保持の3動作)を提案した.物体把持の成功は初期把持位置に大きく依存するため,物体が指や掌の端点に接触した場合にはロボットアームを用いて接触点の法線方向には力制御,直交する面内は位置制御とするハイブリッド制御を行い物体との接触位置を把持しやすい掌中心へと移動させる.把握動作では,接触点数を最大化し物体を指で包み込み,ロバストな物体把握を実現する.物体と指が非接触の場合,屈曲・伸展関節は速度制御する.接触すれば,隣接する指先側リンクの接触力が目標値に一致するように各屈曲・伸展関節を独立に力制御し,内転・外転関節は物体との片当たり避けて駆動するように位置制御する.保持動作では,物体把握を維持するため外力に応じて屈曲・伸展関節を力制御する.本手法は,非常に単純であるが,物体の幾何学的情報を必要とせず3次元の未知物体の把持を可能とする.提案手法の有効性は,リアルタイムOSを用いた実験システムを構築して実機により確認した.
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