研究概要 |
本研究は,計算機代数的手法を用いて遅れ型むだ時間システムの最適レギュレータ問題と安定化について考察し,多項式行列リカッチ方程式に基づいた制御系設計法を与えることを目的としている.まず,多項式環上のシステムとみなされた遅れ型むだ時間システムに対する安定性,特に,むだ時間非依存安定性との関連を考えると,ローラン多項式環上の行列リャプノフ方程式を考えることが自然であることが分かった.このリャプノフ方程式を有理関数上の方程式とみなし,行列リャプノフ方程式の解が存在するための必要十分条件を得た.次に,形式的に定義された最適レギュレータ問題の解を与える多項式行列リカッチ方程式も,適当な重み行列を与えればローラン多項式環上の行列方程式となることが分かった.そこで,この多項式行列リカッチ方程式から導かれるハミルトン行列について調べた.その結果,多項式行列リカッチ方程式の解が存在すれば,対応するハミルトン行列の特性多項式があるスペクトル分解を持つことが示された.また,逆に,ハミルトン行列の特性多項式がある種のスペクトル公解をもてば,対応する行列リカッチ方程式が解をもち,さらにその解を用いて定義される形式的なフィードバックを施して得られるシステム行列の特性多項式が,分解を与える多項式と等しくなることが導かれた.また,与えられた体上の真にプロパーな有理行列に対し,システム行列がヤコブソン標準形となるような最小実現を構成し,この最小実現を構成するアルゴリズムを与えた.このアルゴリズムは,計算機代数システムを利用して計算可能である.
|