研究概要 |
社会構造の複雑化に伴い制御システムの果たす役割は益々増大しており,さらに,その機能の高度化が要求されている.キーワードは自律であり,例えば,自律型ロボットは,人間を単純作業や過酷な労働から解放し,また,人間には,不可能な環境での作業も可能となる.しかしながら,ロボットの置かれた環境は時々刻々変化するため,ミッションを遂行するには,環境の認識・判断に基づいた動作計画の立案といった高度な自律機能を与えてやらなければならない.このような問題に対し,複雑かつ変動する環境下においてもロバストに対処できる制御法の一つとして,行動型人工知能があるが,複数の要素行動間の調停をいかに適切に決定するかが未解決の問題であったが,本研究では免疫系を工学的にとらえ複数の要素行動間の調停機構として作用させる手法を提案し確立した.具体的な成果は次の通りである. (1)免疫系をネットワークとしてのシステムとして捉えた場合,工学的には,連立微分方程式を実時間で解く問題に帰着される.実用を考えた場合,機器に搭載されるコンピュータの性能にもよるが,連立微分方程式の実時間計算がネックになる.そのため,免疫学的記憶機構を導入し,これをニューラルネットワークで実現し,免疫ネットワークと結びつけることにより,連立微分方程式の実時間計算の負荷を激減させ,実用レベルにした. (2)非ネットワーク型免疫システムにおいて,抗体の設計の難しさは特に抗原の数が増大するにつれて爆発的に増加する.これに対して,機械的にすべての抗体を造りだし,その後,遺伝的アルゴリズムを利用して,適切な抗体を設計していくという自動設計を実現した. (3)免疫応答ネットワークシステムに,抗原に対する適切な抗体を獲得するα学習機能と競合状態を解消するための調停機能を高めるβ学習機能を付加した進化型行動調停システムを実現した.
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