研究概要 |
構造物〜基礎〜地盤系の地震時挙動で見落とされてきた現象のひとつに,軟弱地盤で発生する「杭頭付近の隙間」の影響がある.本研究では,地盤〜構造物系の一体解析によって「隙間」が地震応答特性に与える影響の評価を試みた.「隙間」を考慮した地盤反力モデルは,「弾塑性論に基づく押し拡げ理論」に基づいて定式化された.さらにこのモデルでは「繰り返し載荷の効果」も考慮されている.その解析結果は、遠心模型実験法で検証された.解析で想定した一体系構造物は杭基礎で支えられた仮設の自立型タワークレーンである.この解析例によって,隙間の発生と進展が振動特性にどのような影響を与えるかを解析した. 平成14年度は,「隙間」を考慮した地盤反力モデルの高精度化を行なうとともに,ばね-質点系モデルで応答解析を行った.比較のために,遠心模型実験を使用して杭基礎模型を用いて,上部構造物の応答特性を解析するとともに,杭に生じる曲げモーメントを実験結果と比較検討した. 平成15年度には,粘土地盤模型を用いて遠心模型実験によって,自立型クレーンの振動特性の変化と動的安定性をより詳細に検討した. 平成16年度は,粘土地盤模型を用いて自立型タワークレーンの動的安定性を検討した.その結果,加振に伴う地盤の劣化現象により,応答加速度,曲げモーメントが減少するが,相対変位は増大するということを確認した. 以上のことより,杭頭付近に発生する隙間とその進展によって地盤〜杭基礎〜構造物系の振動特性が変化して,入力特性によっては上部構造物が過大な応答する可能性があることが明らかになった.また,その挙動を解析できる「隙間」を考慮した地盤反力モデルが定式化された.
|