研究概要 |
海洋観測レーダは波浪方向スペクトルや海浜流の平面分布をほぼ瞬時に計測できる新しいタイプの観測機器である.さらに従来の海底設置型観測機器に比べて設置・維持管理も容易であるなどの長所も備えている.しかしレーダによる現地観測の実績は少ないのが現状である.そこで本研究では計測機器および解析手法の改良を施し,海洋観測レーダの実用化を試みた. まずレーダ機器を改良しアンテナ回転速度を向上させた.従来のアンテナ回転速度は20rpmであり,ナイキスト周波数の関係から観測できる波浪は周期6秒以上の成分のみであった.有意な強度を有する周期6秒以下の短周期成分は観測できないばかりでなく,エイリアシングとして観測精度低下を招いていた.そこでこのアンテナ回転数を40rpmに向上させ,周期3秒までの波浪成分も観測可能にした. また海洋表層流速分布や波浪方向スペクトルの解析手法に非線形最小自乗法を導入した.レーダ計測データから流速分布や方向スペクトルを推定するには,レーダ画像の三次元スペクトルに波浪の分散関係曲線を回帰させる.この分散関係曲線は非線形であるため,従来の線形最小自乗法による重回帰ではノイズを多く含む波浪低周波数成分が特に偏重される傾向があり,これが流速分布や方向スペクトルの推定における大きな誤差要因の一つであった.そこでここでは修正Marquardt法を用いた非線形最小自乗法を導入した.これにより波浪低周波数成分の偏重傾向を是正でき,妥当な解析結果を得ることができた. 上記の改良を施したXバンド海洋観測レーダの有用性を検証するために,2003年12月から2004年2月まで新潟県大潟海岸で現地観測を行なった.その結果,この海洋観測レーダにより妥当な海洋表層流速分布および波浪方向スペクトルを観測・推定できた.このことから今回の改良を行なった海洋観測レーダの有用性を示すことができた.
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