研究概要 |
(1)GMS雲画像データ及びGPVによる1999年6月災害時の気象 レーダー雨量情報とGMS, GPV気象データを併用して,1999年豪雨の特性と雨域の移動について検討した.GMS雲画像から画像相関法によって雲の移動速度ベクトルを求め,省時刻における前線近傍を表す収束域と低気圧の中心位置を求めた.得られた前線の位置は,レーダー雨量が大きな場所と時間が一致していた.前線の形状と位置から,1999年広島土砂災害は寒冷前線による収束に地形性の収束が重なって引き起こされた集中豪雨が原因であると考えられる.GPVデータから得られた温度前線,風速場による前線位置は,雲画像やレーダー情報から得られた前線位置と比較的一致していた.しかしながら,気象天気図による位置とは大きく異なっていた.数km程度の精度が要求される土砂災害予測ではレーダー雨量計の重要性が非常に高いことが示された. (2)GPVデータに基づく災害時における気象場の解析 災害時(6月29日9時〜15時)のGPVデータを初期及び境界条件として,西日本地方上空の大気風場の数値解析を行い,地上風の収束領域の時間変化を捉えた.広島災害発生個所である八幡上空において豪雨が発生した時間帯に上昇風の卓越を確認することができた.これは,強風による地形性収束によると思われる.また,豊後水道からの強風域の侵入が確認された. (3)広島県域土壌水分モデルの構築 レーダー雨量を入力情報とするタンクモデルを作成した.流域を数km^2に小分割し,小流域で平均化されたレーダー雨量を入力条件として,ダンクモデルによる流出解析を行い,水分土壌の解析を行った.対象流域は,1999年6月災害時に被害が顕著であった八幡川流域及び呉地域とした.その結果,これらの流域の中でも災害件数が取り分け多かった場所において,土壌水分量を指標とした危険度が非常に高くなっていること,災害発生時刻と危険度ピークがほぼ一致した.このことから,レーダー雨量を入力情報とすることで危険度予測精度の向上を図れると考えられる.
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