| 研究概要 |
平成14年度は、プレキャスト鉄筋コンクリート構造(PCa)の接合部に存在する異なる複数のせん断抵抗要素,特に圧縮軸力下の摩擦抵抗要素を含めた場合の複合効果を把握することを目的として,接合部をモデル化した要素試験体を製作して実験を行った。平成15年度は,平成14年度に実施した要素実験を解析することにより,接合部に存在する個々のせん断抵抗要素(接合筋のダボ抵抗,シヤキーの直接せん断抵抗,圧縮軸力下の摩擦抵)の構成則(抵抗力とせん断ズレ変形の関係)を定式化した。以下に、概要を示す。
(1)平成14年度:試験体は225×800mmの接合面を有し,せん断抵抗要素は接合筋,コンクリートシヤキーおよび接合面の摩擦抵抗とした。実験は建研式加力装置を用い,接合面に生じる圧縮力および引張力を一定に保持した状態で接合面にせん断力を加え,各せん断抵抗要素および複数のせん断抵抗要素が組合わされた場合のせん断力とズレ変形の復元力特性を実験データとして得るとともに,実験結果より以下の知見を得た。
(1)プレキャストRC部材接合面におけるせん断抵抗要素として,接合筋のダボ抵抗,シヤキーの直接せん断抵抗,圧縮軸力下の摩擦抵抗および接合面の状態による固着抵抗と定義し,固着抵抗を除く個々の抵抗要素の負担力を定量的に把握した。
(2)異なる構成則を持つせん断抵抗要素の累加方法は,接合面に軸力が生じる場合にも,個々の構成則の変形適合を考慮した累加方法により評価できることを確認した。
(2)平成15年度:PCa接合部に複数の異なるせん断抵抗要素が存在する場合に,個々のせん断抵抗要素の構成則を変形を考慮して組み合わせることにより,全体挙動を推定する方法を提案し,平成14年度に実施した実験結果により検証し,PCaコンクリートの接合部における構造性能評価方法として以下を提案した。
(1)接合部における許容せん断ズレ変形量を設定した。
(2)各接合部の許容せん断ズレ量における組み合わせ可能なせん断抵抗要素を定義した。
(3)各せん断抵抗要素の構成則において,繰返しモデルおよび包絡線モデルを定式化した。
(4)構造性能評価方法の一つして、一体打ちと同等のせん断耐力評価式を提案した。
|
