研究概要 |
本研究は,座屈拘束型の履歴減衰型制振ブレース(以下,制振ブレース)が,定着板及びグラウトを介してPC銅棒でRC架構の外周に圧著される制振補強構法を対象とし,その設計法の確立を目的とした。本論では制振ブレースを取付けた崩壊型の異なる3体の1/2スケールに縮小した門型RC架構の静的繰り返し載荷実験を行っている。崩壊型の違いが制振ブレースの制振効果へ与える影響を明らかにする為に,架構の損傷過程を把握し,エネルギー吸収に着目して耐震性能の評価を行った。 本実験により下記の知見を得た。 1)各崩壊型架構に関して ・梁曲げ降伏型機構は,好ましい崩壊形の一つであるが,本論で対象としたRC躯体の外周部に制振ブレースを偏心取付けを行う場合,低降伏点鋼特有のひずみ硬化を起因としてRC梁端部に発生するねじれ変形が増大し,ブレースのエネルギー吸収量のみならず,エネルギーの負担割合(ブレースのエネルギー吸収量/全体のエネルギー吸収量)も低下し,制振補強効果が低減する事を示した。しかし,制振ブレース取り外し後は高い残余耐震性能が示された。 ・柱曲げ降伏型機構は,ねじれによるRC梁端部の損傷が小さく,非常に有効な制振補強効果が得られ,本構法における制振補強に適していると言える。 ・柱せん断破壊型架構は,梁主筋が有効に働きねじれが抑えられ,制振補強効果は高かった。しかし,せん断破壊特有の残余耐震性能の低下が見られた。 2)PC鋼棒の軸力は制振ブレースの偏心取付けにより梁端部のねじれの影蜜を受け軸力が抜けたが,定着板の回転量は微少であることから,制振ブレース取付部の性能は十分確保できていると言える。しかし,ひずみ硬化により耐力が上昇する制振ブレースにより補強を行う場合はブレースにより梁端部に生じる力及びねじれ変形を十分に考慮することが必要である。
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