研究概要 |
浸水の危険性について問題分析し,防災避難計画を地震との比較をしながら指針を策定し,研究の総括を行った。 1)浸水の危険性の問題分析 浸水による停電,機械設備や昇降機の故障のために起こる2次的災害,外部の情報から遠ざかって置かれている駐車場や機械室や管理事務所などのサービス側諸室の危険性などが問題としてあげられ,さらに隣接する地下鉄や駐車場といった都市機能への影響,営業停止による売上損失などの損害の大きさを考えると,浸水による被害は対策投資を講じて回避するに十分な理由がある。 2)浸水被害予測の分析 ・過去に浸水被害があった地下街と浸水被害を未だ受けていない地下街では,その浸水対策に差があり,浸水被害を経験して浸水への意識,対策が向上する。 ・地下街の立地状況が浸水に大きな関係があり,立地の把握が浸水対策上,重要である。 ・浸水被害は時間降雨量55mm以上の豪雨によって発生した内水の氾濫によって引き起こされたものが多い。 ・出入口の階段からの浸水が最も多く見られたが,それ以外にも,建物の破損した箇所や設備機器の壊れた部分から水が浸入するといった被害も見られた。 浸水対策に用いられる対策は,止水板と土嚢であるが,地下街によって止水板と土嚢の保有や,出入口階段に施すマウンドアップの高さに差を読み取ることができる。 3)防災計画の要点 情報収集,浸水対策マニュアル,浸水対策設備(止水板,土嚢)について,成功例と失敗例を比較した。 地下空間は一種の密室状態になる。水圧はたいへんな強いものであり,地下への避難階段に水が流れ込んだ場合,避難は容易ではない。この点が十分に理解されていないことが分かった。防災は,人々の防災意識が前提となり,マニュアルと設備と防災システムの三点が総合的に調整されて機能する。どのひとつが欠けても十分には機能しない。 建物や施設の計画・設計者は,安全を求める利用者側の要求にこたえ,リスクマネジメント実施をサポートする方策を最初からデザインしておかなければならない。
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