研究概要 |
最近、3d遷移金属酸化物が織り成すスピン、電荷、格子が複雑に相関した多彩な物性が注目され、将来の応用に向けてMn系、Co系酸化物が盛んに研究されている。熱伝導率、比熱などの材料の熱的パラメータは、応用面からは熱電変換特性や熱的安定性の評価に必要な物理量であり、一方物性的には強磁性金属転移や磁気抵抗効果のメカニズムを検討する上で重要な測定手段である。本研究では特にLa_<1-X>AE_XCoO_3(AE=Sr, Ca, Ba)の磁性と熱伝導率などのフォノン伝達量の関係を系統的に研究した。さらにこの系の熱電材料としての可能性も検討した。 La_<1-X>AE_XCoO_3の電磁気学的、熱的特性を試料作製から物性評価まで系統的に行った。La_<1-X>Sr_XCoO_3系はX>0.2で転移温度T_c以下で強磁性金属転移を示し、熱伝導率もT_c以下でわずかに増大するが、この増大は電子熱伝導率の増大でほぼ説明できる。この変化はLa_<1-X>Sr_XCoO_3系などのMn酸化物で見られたJahn-Teller (JT)歪みの緩和による熱伝導率の増大とは本質的に異なることが明らかになった。さらにLaCoO_3の熱伝導率は30K付近に大きなピークを示し、わずか0.5%のSr置換やCoサイトの2%Cu,2%Ni置換により急激に減少する。このピークの原因は30K以上でJTイオンであるCo^<3+>(IS)の生成によるフォノン散乱の増加であると考えられ、Sr置換やCoサイトの2%Cu,2%Ni置換によりJTイオンであるCo^<4+>(IS)が生成され、Mn系と同様にフォノンを強く散乱することが示唆された。このように、JTイオンの存在はMn系、Co系の両方の系において強力なフォノンに対する散乱体になることが明らかになった。また、La_<1-X>AE_XCoO_3系は0.1<X<0.15で有望なp型熱電変換材料であることも明らかになった。
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