研究概要 |
本研究は,多電極を配置した電界印加型イオン交換法をもちいて,ガラス内部に電場勾配を形成させることでガラス中を移動するイオンの動きを制御し,通常とは異なる形状を有するイオンのプロファイルを形成させることを目的として行った.前年度までの研究で,スパッタ法とフォトリソグラフィをもちいて形成したAg金属細線を主極とし,それより1mm離れたところに形成したAu電極をバイアス極として,電界印加を行ったところ,主極電圧50Vに対して,300Vを印加した試料で,Ag濃度プロファイルの形状変化を確認した.今年度は,FE-SEM・EDXによるプロファイルの精密測定を主に実施し,電界分布によるイオンの拡散挙動を解析した.その結果,バイアス電圧印加によって,バイアス電極と対極との間に電流が流れている間では、Ag主極よりイオン化してガラス中に拡散するAgイオンは,横方向への拡散をほとんど生じることなく,深さ方向へのみ進行する,バイアス電圧によるイオン移動が終了するとバイアス電圧が印加されていても横方向への拡散が進み始め,最終的に形成されるAgイオン濃度プロファイルは2段階の処理を経た合成プロファイルを示すことが明らかとなった.このことにより,バイアス電極からのイオン拡散を持続させながらAgイオンを拡散させることで,深さ方向に深く幅の狭いAgプロファイルを形成させることができることが明らかとなった.このことを利用することで,通常のイオン交換法では得ることのできない光導波コア部の形成が可能となることが明らかになり,低損失なイオン交換光導波路の形成の可能性があることがわかった.
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