研究概要 |
アミノ酸(HAlaOMe,HValOMe,HGlyOEt,HPheOMe,およびHLeuOMe)あるいはエタノールアミンから誘導した,ニッケル(II)ジチオカーバマート錯体を合成し,基板上へ結晶性の膜を形成することをを検討した。具体的には,錯体の飽和溶液中に各種基板[シリコンウエハー(表面酸化物層ありおよびなし),銅,チタン,ニッケル,酸化銅,ガラス,アルミナ]を浸漬し,約一日かけて結晶析出の状態を観察した。その結果,いずれの錯体もシリコンウエハー鏡面上には結晶析出しなかった。また,アミノアルコールから合成した錯体はどの基板上にも結晶を析出しなかった。一方,アミノ酸から誘導した錯体では,錯体ごとに析出の状況が異なることを見出した。すなわち,ValおよびAla錯体は金属基板上に均一な結晶性薄膜を形成したが,酸化物上には島状に結晶を析出するに止まった。また,逆にGly誘導体は酸化銅基板上には均一な薄膜結晶を形成したが,銅基板上には析出せず,表面認識能が認められた。どの錯体からも鏡面状に結晶が析出しなかったシリコン基板を精密にエッチング処理すると,キンクあるいはテラス部分で結晶析出を認めることができた。これらは表面エネルギーの違いが結晶の核形成に影響を与えていることを示唆している。別途これらの錯体は比較的低温で分解し,セラミックス結晶を形成できることを見いだしていることから,セラミックス表面への特異的な結晶析出を利用したセラミックス表面へのパターニングへの利用が期待できる。
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