研究概要 |
本研究では,結晶粒超微細化メカニズムを明らかにし,また,超微細化に付随して起こる現象について新しい知見を見いたした.本研究では,超強加工を施した数十ミクロンから数百ミクロン程度までの大きさの金属粉末の詳細な組織学的な検討を行う必要から,新たに透過型電子顕微鏡用試料作製方法を確立した.この実験手法を用いて,メカニカルミリング(MM)を施したSUS304L鋼粉末のナノ結晶化のメカニズムについて検討した.その結果,ナノ結晶粒を有する表面改質層の生成,表面改質層と内部の境界近傍での幅数十nm長さ数百nmのナノレイヤー組織の形成,ナノレイヤー組織からの等軸ナノ結晶粒の生成,というメカニスムを明らかにした.さらに,ナノ結晶化と材料固有の積層欠陥エネルギー(SFE)の関連性について検討した.SFEの差違を明確にするためにSUS304L, SUS316Lおよび純Niの粉末にMMを施し,粉末内部の詳細な組織観察を行った結果,SFEか小さい材料ほとナノレイヤー組織が形成されやすいことを明らかにし,結晶粒超微細化の材料依存性を明らかにした.また,超強加工にともなう新しい相変態について組織学的観点から詳細に検討した.SUS316L鋼粉末はMMによってBCC構造を有する結晶粒か生成する.このBCC粒は,結晶粒超微細化にともなう母相の界面エネルギーの上昇と格子欠陥(原子空孔)の増大,粒界の凹凸の形成にともなう母相の化学的自由エネルギーの上昇により,マッシブ的に変態したフェライト粒であることを明らかにした.超強加工という機械的エネルギーを,従来,温度差を与えることでしか達成できなかった相変態の駆動力に置き換えることが可能であることをはじめて実証した.この結果は,これからの材料開発において極めて重要な指針を与えるものである.
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