研究概要 |
本研究では,低温短時間で,良好な電気的特性および基板との密着性を示す厚さ1μm以上のPZT薄膜を作製するプロセスを開発することを目的として,ゾルーゲル法とレーザーアブレーション法のハイブリッドプロセッシングを検討した.ハイブリッドプロセッシングは,蒸着後のアニール温度が650℃で,レーザーアブレーション法と比べると,100℃ほど下がった.ハイブリッドプロセッシングにより作製した薄膜は(111面あるいは(100)面の結晶配向を持ち,良い電気的特性を示した.薄膜の微細組織について調べた結果,レーザーアブレーション法で作製したPZT層のペロブスカイト相への変態はゾルーゲル法で作製したPZT層の表面から始まるというエピタキシャル効果により,レーザーアブレーションで作製したPZT層は相対的に低いアニール温度でペロブスカイト相への変態が生じ,ゾルーゲル法で作製したPZT層と同じ結晶配向を持つことが分かった。また,ハイブリッドプロセッシングにより作製した薄膜を用いて,2次元マイクロ・スキャナーを試作した.その結果,2次元マイクロ・スキャナーが良好な動作特性を示し,ハイブリッドプロセッシングにより作製した薄膜はマイクロアクチュエータへの応用が可能であることが明らかになった. 以上の結果から,ゾルーゲル法とレーザーアブレーションのハイブリッドプロセッシングはプロセスの低温化と短時間化が実現でき,PZTの厚膜作製に対して有効であることは明らかになった.
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