研究概要 |
超音波振動を付加する研究は切削,打抜き,引抜きなどの加工分野で一部進められてきているが,板圧延への利用はほとんどない.SUS304,430,Ti, Al, Cuと極低炭素鋼(ULCS),80キロ高張力鋼(HT80)を対象に超音波による加振圧延法を開発し,荷重特性と表面性状の変化を明らかにした. 1.板への超音波振動付加(以下加振)2段ロール・ドライ冷間圧延の特性 (1)設定振幅(振幅)3.3μmでSUS304,430,Ti, Al, HT80の荷重低減効果を確認した.(2)Cu, ULCSでは振幅3.3μmで変らず,むしろ荷重増加の傾向を示し,4.95μmではやや減少した.(3)荷重低減効果を示す材料では圧下率の増大で傾向が顕著になる.(4)条件変更による荷重低減の大小:SUS304,430で板厚2と1mmでは厚い方が大,SUS304で圧延速度1.4と2m/minでは低速の方が大,サイドガイドの有無ではなしの方が大.2段ロール・潤滑冷間圧延の特性(5)潤滑自体による荷重低減が主体で加振による相乗効果はみられない.材料の表層分析結果(6)加振前後の表層部の断面ミクロ組織や板厚方向硬度分布には差異はみられなかった.粗さ,光沢度,表面凹凸像で各条件での変動は把握できたが,明瞭な傾向は現れてはいない. 2.ワークロールへの加振2段ロール・ドライ冷間圧延の特性 振幅3.3μmでULCSでは板加振時と同程度の荷重増加を示し,HT80ではほとんど変化がみられなかった.むしろロール粗さの変化が大きく,設備損傷の懸念もあり更に調査が必要である. 3.板振幅の計測 設定3.3μmの時のレーザ変位計による圧延前の計測結果ではAl, Cu, ULCSで振動数,振幅共に高くSUSで中位,Ti, HTで低位であった.軟・硬質材料による傾向の違いが大きいようである.
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