研究概要 |
金属材料の腐食速度を求める方法には,腐食減量の測定,分極抵抗の測定,分極曲線の測定に基づく方法などがあるが,使用環境での腐食速度の"その場"測定法として利用することは困難である。腐食速度は環境条件によって大きく異なるので,"その場"測定が可能な新しい腐食速度の測定法の開発が望まれている。これまで我々は,アコースティック・エミッション(AE)法を用いて,カソード分極に伴う鉄鋼材料の水素損傷を調べてきたが,その実験において,水素損傷に起因するAEに加えて,腐食反応に起因すると推測されるAEが認められた。そのAEが認められる腐食環境を考慮すると,そのAEの発生原因として水素の発生反応が疑われる。 一方,鋼板の耐食性向上を目的として亜鉛めっきが施され,建築材料や電気製品,自動車用の外板として多く用いられてきた。それらの使用期間の長期化と使用環境の過酷さの増加に伴って,亜鉛めっき処理よりも耐食性に優れるめっき処理法の開発が行われ,Zn-Al, Zn-Ni等の亜鉛合金めっき処理が行われるようになってきた。Zn-5%Al合金溶融めっき鋼板は建材用防錆鋼板として実用化されている。しかしながら,ZnへのAlの合金化に伴う耐食性向上の理由として,塩基性炭酸亜鉛アルミニウムや塩基性塩化亜鉛などの腐食生成物の保護皮膜作用や,Alの合金化に伴うZnの過防食性の抑制作用などが報告されているが,詳細は明らかではない。次世代の高耐食性Zn合金めっき処理法の開発のためには,Alの合金化に伴う耐食性向上の理由を明確にすることが重要である。 そこで本研究では,(1)我々が経験的に見つけた腐食環境の金属材料でのアコースティック・エミッション(AE)の原因究明,(2)腐食速度の"その場"測定法として,AE法の利用の可能性の検討,(3)Zn-5Al溶融めっき鋼板の腐食速度の"その場"測定に基づく,腐食機構の解明を行った。
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