研究概要 |
本研究では,希土類焼結磁石の製造工程で発生するスラッジの再利用について,酸素汚染されたスラッジから希土類元素を効率よく回収するプロセス技術の開発を目的とした. まず,Fe-Nd-Dy-B系磁石スラッジ中の希土類元素の選択塩化反応と真空蒸留に関して,装置の試作と反応試験を行い,本プロセスに関する基礎的知見を得た.次いで,選択塩化・真空蒸留の実験を行い,生成物の組成および選択塩化の効率と真空蒸留の効率に関する定量的評価を行った. Fe-Nd-Dy-B系磁石スラッジについて,アルゴン雰囲気下,1073Kで12h, FeCl_2による塩化反応を行って希土類元素を抽出し,さらに,1273Kに昇温して真空蒸留を行った.実験の結果,温度853-ll23Kの高温部において,82.4%Nd,16.8%Dy,0.8%Feの凝縮物が得られた.この凝縮物中のB含有率は分析限界以下であった一方,温度413-853Kの低温部において,98.7%Fe,0.7%Nd,0.3%Dy,0.2%Bの凝縮物が得られた.坩堝内残渣の主成分は少量のNd, Dy, B,および,微量のCo, Clを不純物として含有するFeであった.実験におけるNdおよびDyの抽出効率は初期スラッジ中含有量の95%程度であった. さらに,このプロセスで使用される塩素の循環と他の廃棄物中の塩素の有効利用に関して,ポリ塩化ビニル(PVC)の廃棄物と希土類酸化物の反応についての基礎的検討を行った.He雰囲気下で各種希土類酸化物とPVCの混合物を加熱し,反応による希土類の塩化,および,PVC中の塩素の酸化物による捕収率を調べた.1073Kでの実験の結果,Nd_2O_3,La_2O_3は,かなり高効率で酸塩化物LnOClに転換されることが示され,磁石スラッジの選択塩化の塩素源として,PVC廃棄物を使用する可能性も確認された.
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