研究概要 |
鉄鋼冷間圧延用炭化物系多合金白鋳鉄の開発を目的に,最適成分の検討を行い,その成分を有する鋳鉄について,凝固組織と凝固条件の関係,変態特性,熱処理特性,摩耗特性の検討を行った。最適成分としてはC量:1〜1.5%,Cr:5%,Mo:5%以上,V量:1%以上が推奨される。この成分を有する合金には,MC,M2C共晶炭化物が9〜12%含まれる。凝固組織は冷却速度に依存して変化し、デンドライト二次アーム間隔や炭化物の大きさは,冷却速度の関数として表され,冷却速度が増大するほど小さくなる。変態挙動を調査した結果,パーライト変態、ベイナイト変態及びマルテンサイト変態が認められ,パーライト及びベイナイト変態領域は長時間側にある。このため焼入れ性は良い。しかし,Mf点が認められないことから,焼入れ状態ではマルテンサイトと残留オーステナイトが共存する。焼入れ焼戻し特性を調査した結果,焼入れ後の焼戻しでは,高合金を含有する工具鋼や,高炭素を含有する多合金系白鋳鉄と同様に二次硬化特性を示し,約800Kでの焼戻しで最高硬さ(850HV)を示す。この硬さは冷間加工用ロール材に必要な硬さ(800HV)を上回っている。スガ式アブレッシブ摩耗試験により,耐摩耗性を評価した結果,耐摩耗性は,高炭素を有する多合金系白鋳鉄よりも幾分劣ると考えられる。
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