研究概要 |
鉛フリー半田粒子のモデルとして球形の銅粒子を使用し,ボールミルを用いた乾式機械的処理によって銅粒子表面をワックス粉体で被覆して酸化防止被膜を形成した。銅粒子の一軸圧縮試験をより得られた圧縮エネルギーとひずみの関係から,ボールミルが処理中に銅粒子に与える機械的エネルギーを把握し,銅粒子が変形しない条件を被覆処理におけるボールミルの最適操作条件とした。ワックスを被覆した銅粒子を硝酸溶液に浸して溶出試験を行ったところ,ワックス被膜が銅の溶出を抑制することを確認した。次に代表的な鉛フリー半田の一つであり,銅粒子よりも軟らかい錫-亜鉛合金粒子について同様の処理を行った。ワックスで被覆した錫-亜鉛合金粒子をフラックスとともに混練してソルダーペーストを作製し,一定期間室温および低温で保存した後,銅板上で加熱時の濡れ広がり性を評価した。ワックスを被覆することにより,室温保存した場合でも合金粒子の酸化が抑制され,良好な濡れ広がり性を示した。 また,ソルダーペーストの流動特性をキャピラリー式レオメータで評価した。ペーストの流動性に及ぼす粒子混合率、被覆の有無、粒子の形状(ひずみ)の影響を各種測定条件の下で測定し粘性係数として整理した。その結果、ペースト中への粒子混合率が89.5wt%(50vol%)と高充填状態でも流動性が確保されるが、粒子の変形が進行するとともに流動抵抗が増大した。粒子のひずみが0.1以下の場合には球形粒子と同様の粘性係数を示した。また、あらかじめワックスでコーティングした粒子では、被膜成分の濃度が0.9〜1.2wt%(被膜層厚さ約1μmに相当)までは流動状態に大きな影響を及ぼさないことが確認された。これらの結果より、機械的なコーティング処理のエネルギー範囲で目的の粒子設計が可能であることが示された。
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