研究概要 |
新規の高活性脱硫触媒を開発するために、メソ多孔体であるメソポーラスシリカMCM-41に種々の貴金属(NM=Pt, Pd, Rh, Ru)を5wt%担持した触媒を調製して、チオフェンの水素化脱硫(HDS)反応に対する活性(350℃)を検討した。なお、脱硫反応生成物は申請のガスクロマトグラフで分析した。 その結巣、担持した貴金属の活性の序列はPt>Pd>Rh>>Ruであり、水素化能の高い貴金属ほど高い水素化脱硫活性を示した。また、MCM-41に吸着したチオフェンの赤外吸収スペクトルから、チオフェンはMCM-41表面の酸点、すなわちシラノール基(Si-OH)と相互作用して吸着し活性化されることが明らかとなった。また、種々の実験から水素は貴金属上で活性化されてスピローバー水素になることがわかった。これらのことから、貴金属/MCM-41触媒によるチオフェンのHDS反応では、貴金属上で生成したスピローバー水素がMCM-41の表面シラノール基(弱い酸点)との相互作用で活性化されたチオフェン分子を攻撃することにより進行することを明らかになった。したがって、より高活性な貴金属担持MCM-41系脱硫触媒を設計開発するためには担体であるMCM-41の酸性質の向上させるとともに触媒上の貴金属の水素化能を向上させることが必要であることを示唆し、これらの基礎的知見を基にしてより高活性な貴金属担持MCM-41触媒の設計を試みた。 すなわち、MCM-41の酸性質を向上させるためにMCM-41の細孔内をアルミナで修飾したアルミナ修飾MCM-41(Al_2O_3-MCM-41)を調製した。これを担体とする貴金属担持Al_2O_3-MCM-41触媒を調製してチオフェンのHDS反応を行ったところ、予想通り貴金属/Al_2O_3-MCM-41触媒は貴金属/MCM-41触喋よりも著しく高いHDS活性を示した。この原因はアルミナ修飾によりMCM-41上に生成した強いブレンステット酸点(B酸点)にチオフェン分子が吸着してより活性化されるために高いHDS活性が得られたものと推論し、赤外分光法によるB酸点生成およびチオフェンとB酸点との強い相互作用による活性化を確認し、チオフェン分子の活性化機構を明らかにした。
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