研究概要 |
リジン発酵プロセスを対象に、二次元電気泳動によるリジン生産菌(Brevibacterium flavum,ホモセリン要求株)の細胞内の遺伝子産物の定量・定性を行い、その経時的変化を解析することにより、新たなバイオプロセスの最適化・制御の開発を目的とした。 二次元電気泳動に用いるサンプル調製において、細胞溶解法にガラスビーズによるホモジナイゼーションを検討した結果、タンパク質溶出の最も効率的な条件を決定した。また、この菌体破砕時にPMSF(プロテアーゼ阻害剤)及びアセトン沈殿法によりタンパク質を濃縮した結果、タンパク質スポットの検出が大幅に改善することがわかった。次に、このサンプル調製法で、培養フェーズを解析した結果、菌体増殖期(約480)、リジン生産期前期(約450)、後期(約320)と培養フェーズが移行するにつれてタンパク質スポット数が減少し、また発現量を示すスポットの大きさも減少することがわかった。さらに培養フェーズと発現タンパク質の関連性を調べるために、二次元電気泳動マップの画像解析を行い、ペプチドマスフィンガープリンティングによって解析されたデータベースに基づきタンパク質の同定を行った結果、菌体増殖期では解糖系に関係する酵素(Eno,Gpm,Pfk,Fda,Tpi,Gap)とTCAサイクルに関係する酵素(FumC,Mqo,AceB)を同定することができた。リジン生産期前期では解糖系やTCAサイクルの酵素が同様に発現を確認することができ、さらに増殖期では見られなかったリジン生産系の酵素(DapA,Ddh)を同定することができた。これらから、リジン生産における菌体の培養状態の変化を二次元電気泳動で解析しうることが明らかになった。 今後、従来リジン発酵の生産性を制限していた因子を明らかにすると共に、その制限因子を克服するための最適な制御策を検討する。
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