研究概要 |
本研究では(1)間隙液相の結晶化機構と,(2)結晶化過程の情報を記録するフェライト相の化学累帯構造,(3)最終的に微量・少量元素が濃集するアルミネート相の置換固溶形式,(4)フェライト相とビーライトの常温安定相に及ぼす化学組成の影響に着目して研究を進め,以下の成果を得た. (1)間隙液相の冷却過程で,分別結晶作用を起こすことを初めて見出した.この反応は,液相中に存在する元素が,晶出する固相にどう分配されるかを本質的に決定する.例えばC2S-C4AF擬2成分系で,1375℃と1365℃の間でC2S固溶体+C4A0.41F0.59+液の3相が平衡に共存する.1375℃よりも高温ではC2S固溶体+液の2相が平衡に共存する.すなわち冷却過程で液からC4A0.41F0.59が晶出し,共存する液の化学組成はFe2O3成分に乏しくなる. (2)分別結晶作用によって,晶出するC4AxF1-xはxの値が結晶中心部から周辺部に向かって連続的に増加する.また微細組織の観察から,分化した液相からアルミネート相が最終的に晶出することが示された. (3)アルミネート相に異種元素が固溶する場合,これらの原子数比の間に一次の関係式(Al+Fe=2-SiとCa+Mg=3-0.5[Na+K+Si])が成立し,化学式が(Na,K)2x(Ca,Mg)3-x-y[(Al,Fe)1-ySiy]2O6(0≦x<0.158,0≦y<0.136)で表されることを初めて見出した. (4)フェライト相の結晶構造は,Al/(Al+Fe)比(=x)に応じて,0≦x<0.235では空間群Pcmnの結晶構造が,0.235<x≦0.7ではIbm2が安定である.またビーライトのα'L相からβ相への転移開始温度は,固溶元素の種類と濃度に応じて,680℃から室温以下まで低下する.
|