研究概要 |
高機能性酸化物の中でLi二次電池正極材料を取り上げた。LiMn_<2-x>M_xO_4(M=Al,Ni,Co,Cr,Zn,Mg)の溶解熱測定を行い、置換元素、組成、焼成プロセスを変えた試料および充放電時に相当するLi量に制御した試料の熟力学データを求め、中性子回折により結晶構造を検討した。さらに、Dv-Xα法などの第一原理計算から、電子状態、結合状態の検討も行った。これらから、充放電前後の熱力学データ、結晶構造、電子構造の変化を検討し、電池特性との関係を検討し、高性能な材料を作製するための指針を提供することを目的とした。第1に、LiMn_<2-x>M_xO_4の構造解析から、置換量(x)の増加またはLi量(y)の減少により,(Mn,M)-O間の共有結合性が増大することを明らかにした。このときマーデルングエネルギーの絶対値も増加し,安定化する傾向が得られ、熱力学データと一致した。第2に、DV-Xα法より、置換することにより構造が安定化することが、計算結果からも示唆された。第3に、充放電時のLi量に対応する試料の熱力学的安定性、結晶構造変化、NEMにより(Mn,M)-O_6ホスト構造の原子核,電子密度分布の関係を検討した結果、置換した試料は充電時も構造的,熱力学的に安定し、(Mn,M)-O_6間の共有結合性が増大することを明らかにした。第4に、5V級Li二次電池正極材料LiMn_<1.5>Ni_<0.5>O_4について合成法の違いによる物性,結晶構造と電極特性の関係、電気化学的にLi量を制御し、充放電時における(Mn,Ni)-O_6八面体を含めた構造変化とサイクル特性との関係を明らかにした。
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