研究概要 |
(2-ヒドロキシテトラフルオロフェニル)ベンゾオキサゾールのp-位フッ素をイミダゾリル基で置換したフルオロファー1を合成し,それらの蛍光挙動を検討した。クロロホルム-アセトニトリル系中での金属カチオンの認識について検討したところ,1はAl^<3+>では緑色蛍光の強度が大きくなるのに対し,Zn^<2+>では青緑色の蛍光が大きく増光することが明らかとなった。他のアルカリ金属やアルカリ土類金属カチオンではそのような変化は認められないことから,1はAl^<3+>やZn^<2+>を選択的に認識すると同時に,それぞれのカチオンに対応して異なる波長の蛍光を発するマルチ化学センサーとしての可能性を明らかにした。Al^<3+>による蛍光強度の変化については、イミダゾール部位でAl^<3+>が捕捉されて引き起こされる電子状態の変化がヒドロキシル基まで伝達され,励起状態分子内プロトン移動(ESIPT)経由による緑色蛍光の増大となって認識されたと考えられる。このようなESIPT経由による緑色蛍光の増大は、(2-アミノテトラフルオロフェニル)ベンゾオキサゾール誘導体、特にフルオロベンズアミド置換したベンゾオキサゾールにもあらたに見いだされ、大きなストークスシフトとなって発現することも明らかになった。一方,ベンゾアゾール骨格を他の骨格に展開する一環として,イミダゾピリジン骨格を持ち2-ヒドロキシテトラフルオロフェニル基で修飾されたフルオロファー2をあらたに合成し,それの蛍光挙動を明らかにした。ついで,金属カチオン認識能について検討した結果,2は選択的にZn^<2+>で青色の蛍光が増光すること,そしてAl^<3+>では淡青色の蛍光が大きく増光することを見いだした。2の場合にも,捕捉する金属カチオンによって蛍光波長が異なる点に大きな特徴があり,マルチ化学センサーとしての機能を持つことが明らかになった。
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