研究概要 |
従来とられてきた強発光体化は発光性物質の化学修飾によるもので、本研究のように無蛍光体(Φ_f<10^<-5>)の強発光体化(Φ_f)10^<-2>)の研究は殆ど見られなかった。球状60π系のC_<60>は光照射により励起三重項状態を作り易いため、実質上無蛍光性(Φ_f:10^<-5>〜10^<-6>)である。C_<60>の強発光体化に関する本研究者のコンセプトは、C_<60>のOctahedra1位二重結合へのシクロ付加により生じる48π系(1)の発光性をシクロ付加により生じる環の電子状態によりmanipulateし、発光性(Φ_f)の増大を計ろうとしたものである。 ピロリジン環縮合C_<60>発光体をアゾメチンイリドによるC_<60>への1,3一双極子付加反応により創製した。その結果、モノ、テトラ、ヘキサ付加体へと縮環数が増加しC_<60>の球状共役系における共役性が低下(58π→52π→48π)するにつれて、蛍光波長は短波長側へシフトし(58π→52π;Δλ=105nm,52π→48π;Δλ=60nm)、その蛍光強度も強くなり量子収率は劇的に増大した(58π系に比べ52π系は約12倍、48π系は約67倍)。事実、52π系(Φ_f=2,2×10^<-3>,Em=599nm)は、無蛍光TLC上でUVランプ(254nm)のもと橙赤色発光として観測され、48π系(Φ_f=1,2×10^<-2>,Em=539nm)は、同一条件下、淡黄色発光として観測された。特に、48π系はこれまで報告されているヘテロ環縮合C_<60>誘導体の中では最も強い発光体刎つである。以上のように、本研究では新しいコンセプトに基づくヘテロ環縮合C_<60>新規発光体の分子設計を行い、ヘテロ環として対称構造を有するピロリジン環を6個導入した新規C_<60>強発光体(量子収率0.012)の合成に成功した。これは、無蛍光性であるC_<60>を強発光体に変換する新しい技術と実用上待望されている強力白色発光体の開発に道をつけたものと言える。
|