研究概要 |
1.遷移金属触媒/ジボロン系によるビニル型求電子試薬の求核的ホウ素化反応 ビス(ピナコラート)ジボロンによるビニル型ハロゲン化物およびトリフラートの求核的ホウ素化反応が、PdCl_2(PPh_3)_2-2PPh_3/KOPh/トルエン/50℃またはPdCl_2(PPh_3)_2-2PPh_3/K_2CO_3/ジオキサン/80℃の条件下で位置特異的かつ立体特異的あるいは立体選択的に進行し、対応するビニル型ホウ素化合物を収率良く与えることを見いだした。官能基選択性にも優れており、ケトン、エステルおよびシアノ基を有するビニル型ホウ素化合物の合成にも適用できる。反応はビニル型求電子試薬のゼロ価パラジウムへの酸化的付加、ボリル基のトランスメタル化およびビニル型ホウ素化合物の還元的脱離を含む触媒サイクルで進行する。また、有機合成への有効利用として、ホウ素化-カップリング反応による非対称共役ジエンの簡便なワンポット合成法およびβ-ボリル-α,β-不飽和カルボニル化合物のα,β-不飽和ケトンヘの1,4-付加反応によるω-オキソ-α,β-不飽和カルボニル化合物の合成法の開発に成功した。 2.遷移金属触媒/ジボロン系によるアルケンの直接ホウ素化反応 ビス(ピナコラート)ジボロンによるシクロヘキセンのビニル位炭素-水素結合直接ホウ素化反応が、1/2[Ir(OMe)(COD)]_2-(4,4'-ジ-tert-ブチル-2,2'-ビピリジン)/ヘキサン/50℃の条件下で進行し、対応する1-ボリル-1-シクロヘキセンを中程度の収率で与えることを見いだした。その際、位置異性体およびジホウ素化体の副生も認められた。反応は、ジボロンと一価イリジウム錯体の反応により生成するトリスボリルイリジウム中間体のビニル位炭素-水素結合への酸化的付加に続く還元的脱離あるいは炭素-炭素二重結合への挿入に続くβ-水素脱離を経由して進行する。
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