研究概要 |
ベックツイン舵に働く流体力の特性を知るため,アスペクト比が等しい対称舵型と非対称舵型(魚型断面)をアクリル板で設計製作した.この上下端板付舵型模型を用いて,大阪大学研究用風洞においてこれらの舵型に働く流体力の計測,流れの可視化実験を行つた。流体力の計測は,左右それぞれの舵に働く流体力をベックツイン船の各操縦運動モードにおける舵角の組み合わせにおいて計測を行った.計測したデータの種類は,舵に働く揚力,抗力,舵軸に作用する回転モーメントの3種類である.この流体力の計測実験において知りえた情報の一つに,ベックツイン舵の舵軸に作用するモーメントは,通常航行中の舵角の組み合わせである平行舵状態において零にはならないということである.なお対称舵型においては零となった.この計測実験により,ベックツイン船においては,通常航行中においても常に舵軸にモーメントが作用していることになり,操舵機に常に負荷がかかっていることがわかった.可視化実験においては,船体後進時においてどのようにベックツイン舵システムに流体が供給され,放出されていくのかについてスモークワイヤー法により詳しく実験を試みた.この実験により後進時および各操縦モードにおける舵周り流体の経路を知ることができた.また,ベックツイン舵を装備した船舶の低速操船時操縦性能推定を試みた.この推定は第1に,模型船に舵を装着した状態における2枚の舵に働く力及び舵間に働く干渉影響について,後進・船位保持・後進左旋回・後進右旋回・船尾右寄せ・船尾左寄せの6種類の舵角の組み合わせにおいて調査した.第2に,MMGモデルを拡張したベックツイン船の新しい数学モデルを提案した.最後に,数値シミュレーションを行い,停止運動・旋回運動を含む実船試運転記録と比較検討を行った.この提案した数学モデルシミュレーションと,実船試運転記録とは定性的に良い一致を示した.
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