研究概要 |
環境リスクとは、人間にとっては有益、便利であるとしても、人間を含む環境系にとってリスクとなるものである。環境問題は複数の利害得失が絡むことや、価値観の相違が問題となることがあるため、環境の開発・利用など人間にとっての利便性や災害の軽減のために,自然環境に働きかける際には環境価値を十分に把握して進める必要がある。また,海洋環境に与える影響として新しい海洋開発プロジェクト計画の進行や,都市の開発圧力,船舶等からの環境負荷・破壊による海洋環境価値の変動と損失を補償するミチゲーション効果がどの程度であるかを見積もることを目的とし,環境価値の価額の同定に仮想評価法(CVM)を用い,環境価値に与える要因の強さを数量化I類を用い,さらに環境価値に影響を与える因子間の因果関係の抽出にクロス集計を用いこれらの統計的手法を組合せた環境価値評価モデルの構築を行った。さらに,このモデルによる環境価値と価値の変動因子やミチゲーション効果の推定性について適応例を通して検証を行った。 環境評価モデルの適応の対象としては1)都市の開発圧力により湾内の環境悪化が問題となっている博多湾の環境価値調査,2)失いかけた環境を住民たちの手で修復してミチゲーションなされた柳川市の環境価値調査,さらに3)船舶の環境負荷要因として懸念されているバラスト水問題を取り上げた。これらの適用例を通して,環境価値評価モデルとミチゲーション効果の有効性を確認した。
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