研究概要 |
高頻度で転移し,コピー数の多いトランスポゾンdTph1を持つペチュニアW138系統を用いてトランスポゾンによる挿入突然変異体を作製する目的で植物体の集団(1024個体)を育成した。この集団を用いて花粉管や花粉で発現している2つのグルカナーゼ遺伝子PhPOGLUとPhPTGLU内に挿入突然変異体の選抜を試みた.その結果,PhPOGLUにトランスポゾンの挿入が検出された。挿入の位置を調査したところ、56番目のイソロイシンコドンにdTph1の挿入が起こっており、遺伝子のグルカナーゼとしての機能が破壊されていることが確認された。しかし、花粉管伸長には影響が見られず、花粉稔性はホモ変異体で68.4%とやや低下していたが、ヘテロ変異体では30%程度の稔性しかなく、原因がPhPOGLUの突然変異によるものかどうかは確認できなかった。一方、ペチュニアW138の集団からピンクの花弁を持つ雌性不稔pfs系統が得られた。このpfs系統はAn1がトランスポゾンのfoot printより部分的に機能を回復した対立遺伝子(an1-pfs)とAn1にdTph1が挿入した対立遺伝子(an1-w138)をヘテロ接合に持つときに現れ、an1-pfsやan1-w138のホモ接合では雌性稔性は正常になるこれまでに報告のないタイプの雌性不稔であることが明らかになった。 一方,イネの葯のESTの発現動態をマイクロアレイで調査,小胞子期の葯で特異的に発現するクローン約90を同定した.これらのクローンの内,Osc4,Osc6の形質転換体4系統は雄性不稔性を示し,これらの後代を展開するには困難であったため,形質転換当代を株保存し再度雄性不稔性の調査を行った.いずれの形質転換体においても稔花粉率が平均で20%以下に減少するとともに,総花粉数が最大で95%減少していた.これらの形質転換体の葯を顕微鏡下で観察したところ,一部にタペート組織の異常が見いだされた.
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